第29号 2014/5/14(水)


メルマガnano2biz29号をお届けします。

2014年3月期の決算発表が続いています。過去最高を記録した企業が多い自動車関連、業績回復傾向の電機産業等、好決算の企業が多いように見受けられます。消費税増税による景気の落ち込みも想定内の模様ですし、法人税減税も早まりそうです。

ところで、1年半近く『第3の矢』が放たれるのを待っていますが、何時になるのでしょう。それとも既に放たれているのでしょうか。

いずれにせよ「天は自ら助くるものを助く」で、経済成長・産業振興の妙薬・即効薬など期待しないで、各企業、各人の自助努力が一番と考えた方が良さそうです。


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nanobiz News
◆技術開発動向
人工関節、耐久性が1.5倍・30年に伸長

<概要>
 人工関節メーカーのナカシマメディカル(岡山)では、股関節、膝関節の軟骨がすり減って痛む「変形性関節症」治療に使用する人工関節の長寿命化に成功した。信州大学、岡山大学などと協力して、ポリエチレン樹脂にカーボンナノチューブを混ぜることによって耐摩耗性、耐衝撃性を大幅に改善しました。
<今後の展開>
 摩耗で出てくるカーボンナノチューブの安全性等をマウス等で確かめ、2年後をめどに臨床試験(治験)を始めたいとのことです。
出所:2014年5月13日『日本経済新聞』
(参考)http://www.shinshu-u.ac.jp/special/research/2011/08/43610.html


結晶成長制御により効率よく電荷が流れる理想的な構造の有機薄膜太陽電池を実現
〜発電層の構造を制御。光電変換効率が約2.2倍向上〜

<概要>
 産業技術総合研究所の宮寺哲彦研究員らは有機薄膜太陽電池の開発において、結晶成長技術を駆使することで、吸収した光エネルギーを効率よく電荷に変換し、効率よく電荷を取り出せる理想的な構造の発電層を構築することに成功しました。
<今後の展開>
 今後、この手法をさまざまな有機半導体材料に適用し、有機薄膜太陽電池のさらなる高効率化を実現させることで、フレキシブルで安価な太陽電池の実用化を加速していくことができると考えられます。
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20140508/index.html


有機薄膜トランジスタを室温印刷によって初めて形成
〜1℃の昇温も行わない室温プリンテッドエレクトロニクスを確立〜

<概要>
 物質・材料研究機構(NIMS)の三成剛生MANA独立研究者らの研究チームは、大気下・室温での完全印刷プロセスによって、有機薄膜トランジスタ(TFT)を形成するプロセスを確立しました。また、室温印刷プロセスによってフレキシブル基板上に形成した有機TFTにおいて、平均移動度7.9 cm2 V-1 s-1を達成しました。
<今後の展開>
 製造工程をすべて室温で行うことによって、熱による基材の変形を完全に抑制し、微細な回路を高精度で印刷することが可能になります。さらに、大気下・室温で行う作製プロセスを用いれば、原理的には生体材料のような環境変化に極めて弱いものの表面にも電子素子を作製することが可能です。医療やバイオエレクトロニクス等、様々な分野への応用に繋がるものとして期待されます。
http://www.nims.go.jp/news/press/2014/05/p201405080.html


バイオマーカーを見分けて溶けるゲル状物質を開発
〜診断材料や薬物放出材料として期待〜

<概要>
 京都大学の浜地格 教授らは、疾病の指標(バイオマーカー)となる複雑な生体分子を識別して溶けるゲル状物質(ヒドロゲル)の開発に成功しました。
<今後の展開>
 今後、新しいスマートマテリアルとして、診断材料や薬物放出材料の開発などの医療応用に幅広い貢献が期待できます。
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20140507/index.html


グラフェンの超高速電子状態を直接観察
〜次世代光デバイスの開発を裏付ける〜

<概要>
 東京大学の松田巌准 教授らのグループと東北大学の吹留博一 准教授らのグループが単原子層グラフェン特有の性質で、電子の質量がゼロに相当する状態(“質量ゼロ”)を直接観察することに成功し、質量ゼロの電子の振る舞いが1つの光子に対して複数の伝導電子が発生するグラフェン特有の光応答現象に対応することも分かったと発表しました。
<今後の展開>
 今後、種々のグラフェンについて、“質量ゼロ”電子系の非平衡キャリアダイナミックスの詳細を調べ、より高性能な新規光学デバイス開発の知見を得ることを目指すとのことです。また、成果は光通信やレーザー発振などの光学デバイスの開発、特に、設計において重要な役割を果たすものと期待されています。
https://nanonet.go.jp/topics_ntj/?mode=article&article_no=2484
http://www.issp.u-tokyo.ac.jp/issp_wms/DATA/OPTION/release20140423.pdf
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2014/04/press20140423-01.html


全反射高速陽電子回折法「TRHEPD法」の高度化により究極の表面構造解析が可能に
〜次世代の省エネルギーデバイス実現へ前進〜

<概要>
 日本原子力研究開発機構(JAEA)の河裾厚男 研究主幹、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の兵頭俊夫 特定教授、名古屋大学 一宮彪彦 名誉教授らの共同研究グループが、KEKの高強度低速陽電子ビームを高輝度化して、全反射高速陽電子回折(Total Reflection High-Energy Positron Diffraction, TRHEPD)法の高度化を実現し、シリコン結晶の(111)表面に適用して、その表面超高感度性を実証したと発表しました。
<今後の展開>
 本研究は、最表面及び表面近傍における原子の配列を正確に知ることを可能にし、次世代エレクトロニクス素子用の素材や、触媒など、固体の最表面の機能の解明に役立つとされています。
https://nanonet.go.jp/topics_ntj/?mode=article&article_no=2483
https://www.jaea.go.jp/02/press2014/p14042101/
http://www.kek.jp/ja/NewsRoom/Release/20140421141000/



歪を加えて光信号への変換効果を増大
〜シリコン・ゲルマニウムを用いた低消費電力光集積回路への応用に期待〜

<概要>
 東京大学の竹中充 准教授らが住友化学株式会社との共同研究により、歪を加えたシリコン・ゲルマニウム結晶中において、電子や電子が抜けることにより正の電荷をもった正孔により誘起される屈折率や吸収率の変化が増大することを世界で初めて実証し、光ファイバー通信で用いられる近赤外光で動作し、電気信号を光信号に変換できる低消費電力な光変調器の開発に成功したことを発表しました。
<今後の展開>
 この変調器により、低消費電力かつ小型な光集積回路を大規模集積回路に内蔵できるようになり、IT機器の大幅な省電力化や高性能化、オンチップ光配線を用いたスーパーコンピューターチップなどの実現に道を拓くと期待されています。
https://nanonet.go.jp/topics_ntj/?mode=article&article_no=2482
http://www.t.u-tokyo.ac.jp/epage/release/2014/2014041701.html


昇華特性に優れたSiC粉末原料を開発
〜SiCバルク単結晶の成長速度を約2倍に向上〜

<概要>
 シリコンに代わる新しいパワーデバイス材料として期待されているSiC(炭化ケイ素)は低コスト化が求められており、そのためにはSiCバルク単結晶の生産性向上が課題となっています。産総研の先進パワーエレクトロニクス研究センターの加藤智久研究チーム長らのグループは、SiCの粉末の形状を工夫して昇華ガスの透過性を改善し、従来タイプ(アチソン紛体)の約2倍の昇華率を持ったSiC紛体の合成に成功しました。
<今後の展開>
 今後は、単結晶製造における実用化技術開発や高品質・高速成長を可能にする技術開発を推進するとのことです。
http://www.aist.go.jp/Portals/0/resource_images/aist_j/aistinfo/aist_today/vol14_05/vol14_05_p15.pdf


室温プロセスでフィルム型太陽電池を作成
〜フィルム型で変換効率8.0%達成〜

<概要>
 低コスト・薄型・軽量・大面積・フレキシブルなフィルム型の色素増感太陽電池が期待されていますが、400〜500
と言う高温焼成の工程が必要なことから市販の有機フィルムを使うことができませんでした。産総研先進製造プロセス研究部門の明渡純主席研究員らは、セラミックス微粒子が常温固化する「常温衝撃固化現象」を発見し、常温・高速のコーティング技術であるエアロゾルでポジション法(AD法)の基盤技術を確立し、ち密な光等価率の高いセラミック厚膜形成に成功しました。
<今後の展開>
 これによりRoll to Roll化が可能となり、生産性向上、プロセスコストの大幅な提言が期待されます。
http://www.aist.go.jp/Portals/0/resource_images/aist_j/aistinfo/aist_today/vol14_05/vol14_05_p16.pdf


◆イベント・セミナー等の紹介
ナノ学会 第12回大会 ―深化するナノサイエンス―

 開始日時:2014/05/22〜05/25
 場所:京都大学おうばくプラザ(宇治キャンパス)きはだホール
 連絡先:nano2014(at)mtg-officepolaris.com
 内容:「深化するナノサイエンス」をテーマに、
       物理・化学・バイオ分野の最先端の研究を議論する。

【参加申込】5月16日(金)17時締切
 詳しくは、以下参考URLをご参照ください。
 http://www.mtg-officepolaris.com/nano2014/


ナノフォトニクス& EB実践セミナーのご案内

 ナノテクノロジープラットフォーム6実施機関に導入された最新鋭のEB(電子ビーム)露光装置の紹介と、近年、益々研究が活発なナノフォトニクスの技術動向と最新の研究成果を紹介するセミナーの開催です。

講演内容
特に、描画パターン精度と光学特性の関係に着目して、最新の露光装置を使うことでどのように光学特性の改善が期待できるか、また、セミナー後半では、各実施機関からナノフォトニクス関連の事例紹介があります。

無料実習コース
併設している無料実習コース(アドバンストコースは有料)もあります。
日時:2014年6月6日(金)9:55−17:30
場所:東京工業大学(大岡山キャンパス)
大岡山西8号館E 情報理工学研究科大会議室(10階)
http://www.titech.ac.jp/maps/ookayama/campus/ookayama.html

参加費:無料
定員:120名(先着順)
申し込み:
https://nanoworld.jp/npf/training/h26-1/
問合せ:(独)産業技術総合研究所
 ナノエレクトロニクス研究部門 ナノプロセシング施設
 TEL:029-861-3210 FAX:029-861-3211
 Email:npf-info-ml(at)aist.go.jp




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