第33号 2014/7/16(水)


メルマガnano2biz33号をお届けします。

 今年も台風シーズンに入ってきました。四方を海に囲まれた我が国には、比較的はっきりした四季と台風があります。このような地理的環境、気候風土に培われてきた国民性、精神文化は日本人にとって心地よいものですが、異なる環境に育った人々には理解できない面もあるようです。

これまでは外国人の受け入れは高度人材に限定されていましたが、少子高齢化の影響で諸外国から労働力を導入せざるを得ないという議論に変わりつつあります。「日本らしさ」と言いますか「日本の良さ」をどう守るのか、ある意味では集団的自衛権よりも「日本」の根幹にかかわる重い問題だと考えられます。


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nanobiz News
◆技術開発動向
1ナノメートルの人工分子マシン1個を「見て、触る」ことに成功
〜光学顕微鏡による1分子モーションキャプチャ〜

<概要>
 東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻の野地博行教授らは、分子の機械的な運動を可視化する「ビーズプローブ光学顕微鏡1分子運動計測法(1分子モーションキャプチャ法)」を大きさ1ナノメートルの人工分子マシンに適用し、その回転運動を「見て、触る」ことに成功しました。
<今後の展開>
 人工分子マシン1個の振る舞いを「見て、触り」ながら性能評価できるこの手法は、人工分子マシンの目標の一つ「力を発生して運動する人工分子モーター」の実証に適用できる現在唯一の方法です。将来、例えば光で駆動する人工分子モーターを作製し、生体分子モーターと接続することによって、生体のさまざまな化学反応を光で操作できるテーラーメイドなエネルギー変換技術が可能になると期待されます。
http://www.nims.go.jp/news/press/2014/07/p201407090.html


次世代蓄電池の正極−固体電解質界面のリチウムイオン状態シミュレーションに成功
〜全固体リチウム二次電池の高性能化に向けた界面抵抗制御への貢献に期待〜

<概要>
 独立行政法人物質・材料研究機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の館山佳尚グループリーダーの研究グループは、同ナノ材料科学環境拠点の高田和典チームリーダーの研究チームと共同で、次世代蓄電池の一つである全固体リチウム二次電池の正極−固体電解質界面の高精度電子・原子シミュレーションに世界で初めて成功し、正極界面における界面抵抗の起源を理論的に実証しました。
<今後の展開>
 本研究成果は、全固体リチウム二次電池の正極−固体電解質界面の界面抵抗の起源を明らかにするとともに、緩衝層導入による界面抵抗の低減機構を原子スケールから与えるものとなっており、今後の全固体電池の高性能化に向けた界面設計に貢献すると考えられます。また取り扱いの難しかった固体−固体界面の整合に関する系統的な計算解析手法を提案しており、今後シミュレーションとの融合による全固体電池材料の探索研究がさらに盛んになり、安全でかつ高性能な次世代蓄電池の開発を促進することが期待されます。

http://www.nims.go.jp/news/press/2014/07/p201407030.html


精緻な銀ナノプレート構造を簡単なレーザー照射により実現
〜日中ナノテクノロジー連携による成果〜

<概要>
 北海道大学電子科学研究所の三澤 弘明教授らの研究グループは中国吉林大学と共同で、LSIの高密度化のための3次元微細配線や、光を含む電磁波に対して特異の振舞いをするメタマテリアルの作製技術などに応用が期待される配向性銀ナノプレート構造を簡便なレーザー照射により実現することに成功したと発表しました。
<今後の展開>
 今後、研究グループは、LSIの高密度化のための3次元微細電気配線、メタマテリアルの作製技術などへの応用や高い光電場増強効果を示す銀ナノ構造体を、表面増強ラマン散乱分光計測などを用いた化学センサーや太陽電池の光アンテナ系などへ応用されることを期待しているとのことです。
http://www.hokudai.ac.jp/news/140626_pr_es.pdf


グラフェンの物性制御に向け新しい「炭素−酸素結合」の構造を解明
〜「エノラート」構造が「エポキシ」構造に比べより安定的に生成〜

<概要>
 グラフェンは熱伝導性や透明性が良好で高い電子移動度を持ち、次世代の電子デバイス材料として期待されています。しかしグラフェンには半導体の電子的性質として重要なバンドギャップが存在せず、そのままでは電子デバイスに適用することは出来ないことから、グラフェンを高機能な半導体として利用するためには、バンドギャップを持たせて電流の流れを制御する方法の開発が求められていました。現在はグラフェンの化学修飾が有望な手段とされ、水素、フッ素、酸素などとの反応が試みられています。その中でも特に酸素を反応させてつくる酸化グラフェンが、汎用性の高さや他の官能基への拡張性が優れるとして注目されています。
 理化学研究所(理研)Kim表面界面科学研究室の鄭 載勲国際特別研究員らのグループが、「酸化グラフェン」の化学構造を理論的に調べ、反応性の高い「エノラート」構造であることを明らかにしたと発表しました。
<今後の展開>
 本研究により、金属−グラフェン界面形成における接合力の重要性が明らかになったことから、エノラートの高い化学反応性を利用したグラフェンの電子物性制御が可能になり、グラフェンを用いた次世代電子デバイスの開発が期待されるとのことです。
http://www.riken.jp/pr/press/2014/20140624_2/


有機結晶が光で溶けるメカニズムを解明
〜結晶内分子の“整列”と“運動”の共存がポイント〜

<概要>
 東京工業大学大学院理工学研究科の腰原 伸也教授らの研究グループは、有機結晶が光で融解するメカニズムを放射光X線による結晶構造観察で突き止めたと発表しました。
 結晶中で生じる光反応には幾つかのパターンが知られていますが、光で融解を起こす例は極めて少ないのですが、光で結晶を融解できれば有機材料の革新的な成形・加工技術になると期待され、そのメカニズム解析が待たれていました。
<今後の展開>
 本研究は粉末X線回折測定に放射光からの非常に強いX線を利用することで、従来は測定が困難であったデータの収集に成功したものです。本研究により光照射で融解現象を呈する結晶中の分子の特徴が明らかになり、今後、様々な光融解性有機材料開発の促進に加え、光による材料加工の導入が期待されるとのことです。
http://www.titech.ac.jp/news/2014/027981.html
http://imss.kek.jp/news/2014/topics/0619CrysMelt/index.html


エネルギー問題等で注目される摩擦材料の高効率開発手法を創出

<概要>
 物質・材料研究機構ナノエレクトロニクス材料ユニットの後藤 真宏MANA研究員らの研究グループが、摩擦係数が異なる「摩擦材料」の開発に対して、一度に材料の生成条件と物性評価を多く組み合わせて材料を探索する、コンビナトリアルテクノロジーを適用した高効率な材料探索方法を創出し、目的に応じて摩擦係数の制御が可能になったと発表しました。
<今後の展開>
 研究グループは、本手法を摩擦研究の有力なツールとして、また、材料表面の摩擦係数を位置制御できる技術として期待しており、低摩擦材料の開発によるエネルギーロスの削減や高摩擦材料による高性能ブレーキの開発が加速されるとしています。
http://www.nims.go.jp/news/press/2014/06/201406180.html


ヨーロッパナノ安全クラスターNanoSafety Cluster 2014年概況報告が公開
〜2014 edition of European NanoSafety Cluster Compendium now online〜

 英国ナノテクポータルサイトのInstitute of NanotechnologyにEUのNanoSafety Clusterが2014年概況報告(Compendium)をオンライン公開しています。
 今回の報告書ではナノテクノロジーの社会への安全な導入を確実にするためにEUの支援によって進められているナノ安全に関する各プロジェクトの現状、プロジェクトの相互協力の状況が報告されています。
http://www.nano.org.uk/news/1917/
http://www.nanosafetycluster.eu/home/european-nanosafety-cluster-compendium.html


“超伸長”撚り糸をグラフェンで作る
〜Super-stretchable yarn is made of graphene〜

<概要>
 米国ペンシルバニア州立大学と日本の信州大学の研究者が、強くて、よく伸びる酸化グラフェン繊維の簡単な量産方法を開発しました。撚り糸を容易に作れて強度はケブラー(芳香族ポリアミド樹脂の登録商標)に近いとのことです。
<今後の展開>
 研究グループは、今回開発した方法により、例えば次の様な多数の有用な製品を産み出す可能性があるとしています。

(例示@) 
GOファイバーから酸素を熱的に取り去れば高い電気伝導性(導電率416S/cm)を示すグラフェンファイバーができる。
(例示A) 
グラフェンフィルムに銀(Ag)ナノロッドを加えれば、銅並みの導電率が得られ、銅より軽い電線。
(例示B) 
2000℃でアニールしたGOファイバーは電子線の電界放射源となり、約0.48V/
μmの低い電界で5.3A/cm2の電子流が得られる。
(例示C) 
さらに、様々な高感度センサーも期待できる。

http://www.mri.psu.edu/news/2014/yarn-graphene.asp
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140620143738.htm



異種材料を組み合わせた次世代多接合太陽電池を開発
〜さまざまな種類の太陽電池を簡単に直接接合〜

<概要>
産業技術総合研究所太陽光発電工学研究センターの 菅谷 武芳 研究チーム長らは、さまざまな種類の太陽電池を自由自在に直接接合できるスマートスタック技術を開発しました。
 多接合太陽電池は、さまざまな波長の太陽光を有効に利用した超高効率化が可能な電池ですが、製造コストが高く問題となっていました。
<今後の展開>
 今回開発した技術では、複数の太陽電池セルの接合界面にパラジウム(Pd)ナノ粒子を配列し、電気的・光学的にほぼ損失無く接合します。GaAs基板は再利用可能であることから、安価な超高効率多接合太陽電池の普及が期待されるとのことです。
http://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/2014/nr20140707/nr20140707.html


触媒の性能を維持して白金族使用量を50%低減
〜ナノ粒子触媒の大量製造に有効な調製法を開発〜

<概要>
 産業技術総合研究所は、ディーゼル排ガス酸化触媒に含まれる白金族の使用量低減に有効な触媒調製法(表面ポリオール還元法)を開発しました。
 今回開発した表面ポリオール還元法を用いることで、従来の調製法と比較して、白金族使用量を50%低減して同等の性能を有する触媒を製造することができます。また、耐熱性が向上するとともに、量産性にも優れていることから、今後、量産試験や触媒の実車評価を行い排ガス浄化触媒の実用化につながっていくとのことです。
<今後の展開>
 「ディーゼルエンジンの排ガスを使用した実車レベルでの浄化試験において十分な性能を確保すべく、プロセス条件の最適化等により、触媒の耐熱性や触媒性能のさらなる向上を図り、実用に耐えうる性能の実現を目指すとともに、実用化に向けた量産技術の確立に努める。また、今後予想される自動車の燃費性能の大幅な向上にともなう排ガスの低温化に向け、貴金属使用量が少なくても低温排ガスに対応できる高機能触媒の創製にもつなげていく」としています。
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2014/pr20140703/pr20140703.html


微細トランジスタの不純物濃度分布を高精度に測定する手法を開発
〜次世代半導体トランジスタの開発に貢献〜

<概要>
 産業技術総合研究所ナノエレクトロニクス研究部門の 多田 哲也 研究グループ長らは、微細トランジスタの不純物濃度分布を高精度で測定するための走査トンネル顕微鏡(STM;Scanning Tunneling Microscope)シミュレーション技術を開発しました。
<今後の展開>
 これまで難しかったナノメーターレベルの正確な測定が可能となることから、次世代トランジスタの開発への貢献が期待されます。
 今回開発したSTMシミュレーション技術を半導体デバイスの開発者に提供し、微細デバイスの実現を加速させるとともに、STMの測定者に提供し、測定手法の向上に寄与します。さらに、つくばイノベーションアリーナ ナノテクノロジー拠点や産総研スーパークリーンルーム産学官連携研究棟で、産業界と大学が一体となって次世代技術の研究を進めるための共用インフラとして活用することができます。
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2014/pr20140702/pr20140702.html


■次世代蓄電池の正極−固体電解質界面のリチウムイオン状態シミュレーションに成功
〜全固体リチウム二次電池の高性能化に向けた界面抵抗制御への貢献に期待〜

<概要>
 物質・材料研究機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の館山 佳尚らの研究グループは、
NIMSナノ材料科学環境拠点の高田 和典らの研究チームと共同で、次世代蓄電池の一つである全固体リチウム二次電池の正極−固体電解質界面の高精度電子・原子シミュレーションに世界で初めて成功し、正極界面における界面抵抗の起源を理論的に実証しました。
<今後の展開>
 本研究成果は、最近議論されていた全固体リチウム二次電池の正極−固体電解質界面の界面抵抗の起源を明らかにするとともに、緩衝層導入による界面抵抗の低減機構を原子スケールから与えるものとなっており、今後の全固体電池の高性能化に向けた界面設計に貢献すると考えられます。また本研究は取り扱いの難しかった固体−固体界面の整合に関する系統的な計算解析手法を提案しており、今後シミュレーションとの融合による全固体電池材料の探索研究がさらに盛んになり、安全でかつ高性能な次世代蓄電池の開発を促進することが期待されます。
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20140703/index.html


◆イベント・セミナー等の紹介
第三回TIAパワーエレクトロニクス・サマースクール開催

主催:TIAパワーエレクトロニクスWG、産業技術総合研究所
共催:筑波大学大学院 数理物質科学研究科

 つくばイノベーションアリーナ・パワーエレクトロニクスWGは、人材育成活動の一環として、第三回TIAパワーエレクトロニクス・サマースクールを開催します。

 開催日】 2014年8月22日〜25日
 【対象者】 大学院生、及び、社会人(原則として若手優先)
        但し。パワーエレクトロニクスの未来に夢を持つ方に限ります。
 【参加費】 学生の方は、往復交通費と滞在費(上限有)の全額補助を予定しています
        (食事代を除く)。 社会人は有償となります。
 【詳 細】 http://tia-edu.jp/%E3%83%91%E3%83%AF%E3%82%A8%E3%83%AC2014/


文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム NIMS・AIST合同人材育成スクール
  FIBによるTEM試料作製とTEM観察− 開催(9月1日〜9月5日)のお知らせ

 物質・材料研究機構(NIMS)と産業技術総合研究所(AIST)は人材育成スクールを合同開催します。TEM・FIB試料作製に関する基礎講座から実習までをサポートします。
 その他、NIMSおよびAISTの施設見学も予定しています。

【開催日】 2014年9月1日(月)〜2014年9月5日(金)
【場所】 物質・材料研究機構(NIMS)、産業技術総合研究所(AIST)
【主催】 物質・材料研究機構 電子顕微鏡ステーション
【概略】 文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム NIMS・AIST合同人材育成スクール
     https://nanonet.go.jp/topics_insti/?action=common_download_main&upload_id=1842

参加申込み】 電子顕微鏡ステーションHPhttp://www.nims.go.jp/tem/
【申込締切】 2014年8月20日(水)
 ※実習は、希望者多数の場合、抽選とさせていただきます。
【お問い合わせ】
 物質・材料研究機構 電子顕微鏡ステーション事務局
 E-mail:tem(at)nims.go.jp


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