メルマガ nano2biz 第53号をお届けします。
5月11日に台風6号が日本に上陸し、その後、気温が上昇、連日30度近い日が続いています。通勤途上の小さな空き地にはスギナ、ドクダミ、イヌムギ等の雑草が生い茂るようになり、夏が近い事が実感として感じ取れます。
日本には四季がありますが、年々、過ごしやすい春と秋が短くなっているような気がしています。気候の温暖化なのでしょうか、自然を破壊してきた天罰なのでしょうか。
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nano2biz News |
◆技術開発動向
■次世代半導体材料ゲルマニウムにおける室温スピン伝導を世界で初めて実現
<概要>
京都大学大学院工学研究科 白石誠司教授や英国Warwick大学Department of PhysicsのMaksym Myronov博士のグループが共同で、次世代半導体材料として大きな注目を集めているゲルマニウム(Ge)中に室温でスピンを流すことに世界で初めて成功したと発表しました。
<今後の展開>
室温におけるGeへのスピン注入と伝導が実証され、ゲルマニウムスピントロニクス素子の創出が達成されたことから、今後は、このようなスピン素子を用いた論理演算を実現するための回路設計の指針を得ることを目指すとともに、スピン伝導の効率をさらに向上していくための素子構造の最適化などを行って行くとのことです。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2015/150427_1.html
■微細な貴金属ナノ粒子触媒を固定化
〜水素発生反応の触媒として水素エネルギー社会実現に寄与〜
<概要>
産業技術総合研究所電池技術研究部門エネルギー材料研究グループ 徐 強 上級主任研究員とYao CHEN 元産総研特別研究員らが、「非貴金属犠牲法」という新しい手法を開発し、超微細な金属ナノ粒子の触媒を層状炭素材料であるグラフェン上に均一に固定化することに成功したことを発表しました。
<今後の展開>
この手法により固定化した金属ナノ粒子触媒を、液相の水素貯蔵材料であるギ酸からの水素発生反応に用いたところ、触媒の活性・耐久性が大幅に向上したとのことで、この技術は、水素エネルギー社会実現に寄与することが期待されるとともに、超微細な金属ナノ粒子の新しい合成法として、幅広い応用が期待されるとしています。
https://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/nr20150428/nr20150428.html
■カーボンナノチューブ1本上で生体分子活性制御に成功
〜細胞や生体分子の活性を局所的に操る新しい「ナノヒーター」を開発〜
<概要>
東北大学多元物質科学研究所の井上 裕一助教と大阪大学大学院生命機能研究科の石島 秋彦教授らが、カーボンナノチューブ(CNT)1本上の生体分子モーターの運動を観察し、レーザー照射によりその運動速度を制御する新技術を開発したと発表しました。
<今後の展開>
CNTの優れた特性のひとつに伝熱性があり、この特性を利用してレーザー加熱によるガン細胞の死滅に使われる例があります。CNTの熱制御をより細やかに行うことができれば、細胞の活性化や活性を段階的に変化させるなどの活性操作が可能になり、さらには細胞内の局所部位や生体分子1個レベルまでの制御もできる「ナノヒーター」となることが期待されます。
本研究により、1本のCNT上で生体分子モーターの活性観察が可能になり、さらに、近赤外線レーザーの照射によりモーター活性の可逆的制御に成功しています。本技術のナノヒーターは、ミオシンモーターに限ることなく、他のモーター分子やモーター以外の多くのタンパク質活性制御に応用が可能とのことです。研究グループでは、本技術で細胞内の狙った分子1個だけの活性を自在に操ることが可能になり、生体分子機能メカニズムの解明や医学的応用などに貢献することを期待しています。
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2015/04/press20150427-01.html
■エックス線と化学反応の同時利用で従来よりも小さなナノ粒子を合成
〜ナノ粒子の合成に放射光を用いることで原子13個を安定化〜
<概要>
産総研の製造技術研究部門 大柳宏之 元研究員と山下健一主任研究員が、高エネルギー加速器研究機構と共同で、放射光と化学反応の同時利用により、従来よりもさらに小さな、十数個の原子からなる銅などの後期遷移金属ナノ粒子を合成する技術を開発したと発表しました。
<今後の展開>
今後研究グループは、X線照射による還元反応の微視的機構を検証し、X線効果の理解を深めることにより、様々な元素のナノクラスターの合成を目指すとともに、触媒特性を調べるとのことです。
https://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/nr20150422/nr20150422.html
■五角形のグラフェンの発見
〜夢の新素材として期待〜
<概要>
東北大学未来科学技術共同研究センターの川添良幸教授と北京大学の王前教授の研究グループが、第一原理シミュレーション計算により、五員環のみから構成され、通常のグラフェンとは全く異なる物性を有するペンタグラフェンの理論設計に成功したと発表しました。この新規炭素物質は、負のポアソン比(押すと、その垂直方向にも縮む.通常の物質とは逆)を持ち、ドーピングにより超伝導体になるという特徴をもつ透明な半導体で、また、カーボンナノチューブでは半導体と金属が存在するのに対して、ペンタナノチューブは全て半導体だとのことです。 <今後の展開> 研究グループは、次の研究課題をペンタグラフェンの合成としています。自然界にはまだ見出されていないペンタグラフェンが、実験的に合成されれば、そのものが持つ多くの特徴や、そこから派生する新しい材料により、ナノエレクトロニクスやナノメカニクス分野にペンタグラフェンの広いアプリケーション分野が広がることが期待されています。
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2015/04/press20150421
http://news.vcu.edu//article/Pentagraphene_a_new_structural_variant_of_carbon_discovered
■経口摂取した抗酸化成分「アスタキサンチン」の皮膚への到達、ナノ乳化による皮膚への到達量増加を確認
<概要>
富士フイルム株式会社は京都大学大学院農学研究科 菅原達也教授との共同研究により、マウスに経口で摂取させた抗酸化力を有する成分の「アスタキサンチン」が皮膚まで到達していること、並びに、「アスタキサンチン」を直径100nm以下のサイズにナノ乳化することにより皮膚への到達量が1.7倍に増加することを確認した、と発表しました。
<今後の展開> 今回の結果から、経口摂取によって皮膚に到達したアスタキサンチンが、真皮に発生したUVA起因の活性酸素を除去し、表皮のバリア機能を維持するために重要なセラミドの産生、あるいは維持に影響しているのではないかと推察されています。従って、美容ドリンクやサプリメントでアスタキサンチンを摂取することで、肌のシワ形成や経皮水分蒸散量が抑制されることが期待できることから、富士フイルムは「アスタキサンチン」の美容・健康における効能効果やメカニズムについて研究を進め、サプリメントの開発に応用して行くとのことです。
http://www.fujifilm.co.jp/corporate/news/articleffnr_0973.html
■ペロブスカイト太陽電池の変換効率、世界初の記録公認で15%を達成
<概要>
物質・材料研究機構(NIMS)太陽光発電材料ユニットの研究グループは、ペロブスカイト太陽電池のエネルギー変換効率において、世界で初めて国際標準試験機関で記録が公認され、変換効率15%を達成しました。 <今後の展開> 今後は、この成果をベースに、さらなる高性能キャリア輸送材料を開発すると共に、ペロブスカイト太陽電池の界面を制御することによって、より高い変換効率を目指します。
http://www.nims.go.jp/news/press/05/201505010.html
◆イベント・セミナー等の紹介
■■第四回TIAパワーエレクトロニクス・サマースクール開催■■
つくばイノベーションアリーナ(TIA)・パワーエレクトロニクスMGは、人材育成活動の一環として、第四回TIAパワーエレクトロニクス・サマースクールを開催します。
□開催概要
開催日:2015年8月28日〜31日
対象者:大学院生、及び、社会人(原則として若手を優先)
参加費:学生の方は、TPEC(Tsukuba Power-Electronics Constellations)から、往復交通費と滞在費(上限有)の全額補助を予定しています(食事代を除く)。
社会人は有償となります。
申込:参加ご希望の方はメールにて
power_electronics_summer_school-ml@aist.go.jp までお申し込みください
詳細: https://www.tia-nano.jp/tpec/general/index.php
■■NEDO「中堅・中小企業への橋渡し研究開発促進事業」に係る公募について(予告)■■
NEDOは中堅・中小・ベンチャー企業(以下、「中小企業等」という。)が、橋渡し研究機関から技術シーズの移転を受けてビジネスにつなげることや、中小企業等が保有する技術を橋渡し研究機関の能力を活用して迅速かつ着実に実用化することを通じて、自社の技術力向上や生産方法等の革新等を実現することを支援します。
▼公募開始予定日:平成27年5月下旬
□公募事業概要
対象:中小企業等が実施する新規性・革新性の高い実用化開発
開発体制:革新的な技術シーズを事業化へとつなぐ機能を有する橋渡し研究機関との共同研究により事業を実施する民間企業・技術研究組合等からの申請
橋渡し研究機関:国及び地方公共団体の研究機関、独立行政法人、地方独立行政法人、第三セクター、大学に該当する研究機関
助成額:1億円以内(下限は1、500万円)
助成期間:交付決定日から平成28年度まで(予定)
申請・公募期間:
(1)橋渡し研究機関の申請受付:平成27年4月下旬から3ヶ月程度を予定
(2)事業を実施する中小企業等の募集:平成27年5月下旬から2ヶ月程度を予定
説明会:「橋渡し研究機関」の確認申請(申請者:公的研究機関・大学)及び助成金交付申請(申請者:中小企業等)の両方について、説明があります。
公募要領:公募要領等の詳細は公募開始日にNEDOのホームページに掲載されます。
http://www.nedo.go.jp/koubo/CA2_100080.html
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