54号 2015/6/1(月)

メルマガ nano2biz 第54号をお届けします。

 今、サツキが見頃を迎えています。サツキはツツジとよく似ており、明確に違いを説明できる人は少ないと思います。季節的には、ツツジが4月に花が咲き、サツキは5月〜6月です。ツツジはサツキと較べて花も葉も大きく、ツツジの葉は毛が生えていて服にくっついたりします。見た目は、サツキは色が濃く、夏らしく、元気が良い感じがします。

「隣のトトロ」にサツキとメイが登場しますが、5月のサツキから名前を考えたのでしょうか。


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nanobiz News
◆技術開発動向
ダイキン、フッ素・ナノ加工ではっ水効果長持ち
<概要>
 ダイキン工業は、フッ素を塗るとともに、表面にナノメートル大の凹凸をつけることで、水や油をはじく効果を高める表面加工技術を開発しました。
<今後の展開>
 同社では、自動車やスマートフォンの汚れを付きにくくできるとして、5年以内の事業化を目指しています。
出所:日本経済新聞2015年5月25日

http://www.nikkei.com/article/DGXLZO87220850U5A520C1TJM000/



エタノール燃料から常温常圧で電力を取り出せる触媒を開発
〜カーボンニュートラル社会へのブレイクスル〜

<概要>
 物質・材料研究機構(NIMS)阿部英樹 研究員は、ナノ材料科学環境拠点野口秀典 研究員、および東北大学原子分子材料科学高等研究機構の藤田武志 准教授と共同で、常温常圧のエタノール燃料から有毒排気ガスの発生を伴わずに効率よく電力を取り出すことができる新しい触媒材料「TaPt3(タンタルプラチナ)ナノ粒子触媒」の開発に成功しました。
<今後の展開>
 今回開発した触媒を用いることで、従来の触媒に比べて10倍以上の電流密度を達成し、毒性排気ガスの発生を伴うことなくエタノール燃料から効率よく電力を生みだすことが可能となりました。TaPt3ナノ粒子は、バイオマス燃料技術との協働によって、カーボンニュートラル社会実現へのブレイクスルーを果たすと期待されます。
http://www.nims.go.jp/news/press/05/201505210.html


塗って作れる太陽電池で変換効率10%を達成
〜分子配向に合わせて有機薄膜太陽電池を高効率化〜

<概要>
 理化学研究所(理研)創発物性科学研究センターの尾坂 格 上級研究員らと北陸先端科学技術大学院大学の村田 英幸教授らの共同研究チームは、半導体ポリマーを塗布して作る有機薄膜太陽電池(OPV)のエネルギー変換効率(太陽光エネルギーを電力に変換する効率)を、10%まで向上させることに成功しました。また、変換効率の向上には、半導体ポリマーの分子配向に合った構造のOPVを作製することが重要であることを明らかにしました。
<今後の展開>
 本研究によって、どのような半導体ポリマーを用いればよいか、またどのような点に着目すれば達成するのかを明らかにしました。本成果は、世界中の研究者がOPVの高効率化を目指す上で、非常に重要な知見となります。今後、PNTz4Tに改良を加え、材料に適した素子構造を開発することで、実用化の目安とされるエネルギー変換効率15%の到達に大きく近づくことが期待されます。

http://www.jst.go.jp/pr/announce/20150526/index.html


高効率に電子を受け渡すらせん型有機分子を発見
〜弱い酸刺激でも反応し、塩基で中和すれば元通り〜

<概要>
 科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業の一環として、自然科学研究機構 分子科学研究所の東林修平 助教らは、らせん型分子のヒドラジノヘリセンが、酸と塩基の刺激に応答して可逆的に電子を受け渡す特異な反応を発見し、その仕組みの解明に成功しました。
<今後の展開>
 本研究は、ヒドラジノヘリセンが電子を受け渡す性質が優れていることを示しており、この分子骨格に対して用途に応じた改良を加えることで幅広い有機電子材料分子としての展開が考えられ、中でも有機伝導体材料と有機二次電池が有望です。また、酸と塩基に応答して色や発光が変化する性質をいかし、有機センサー材料としての応用も期待されます。

http://www.jst.go.jp/pr/announce/20150522-2/index.html


永続的に熱エネルギーを保存でき、弱い圧力で放熱できる“蓄熱セラミックス”を発見
〜新概念“蓄熱セラミックス”と外場スイッチング機能〜

<概要>
 東京大学大学院理学系研究科の大越慎一教授と筑波大学数理物質系の所 裕子准教授らの研究グループが、永続的に熱エネルギーを保存できるストライプ型−ラムダ−五酸化三チタンからなる“蓄熱セラミックス”という新概念の物質を発見したと発表しました。
 資料によれば、蓄熱材料には、レンガやコンクリートなどの与えられた熱がゆっくり冷める材料と、水やエチレングリコールのような固体−液体相転移の転移熱を利用する材料とがあります。しかし、いずれも熱エネルギーを長時間保存することができません。蓄熱した熱を長時間保存でき、望みのタイミングで熱を取り出すことができれば、再生エネルギーとして有効利用が可能になります。
<今後の展開>
 得られたλ-Ti3O5材料の太陽熱エネルギーや溶鉱炉の廃熱エネルギーなどを効率良く蓄熱して夜間発電や夜間暖房への利用、感熱シートや繰り返し使用可能なカイロなどへの応用、更に、電流や光などの外部刺激による相変化を利用した感圧の伝導度センサー、電流駆動型の抵抗変化型メモリー、光記録メモリーなどへの応用が期待されるとのことです。

http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/6185/

https://www.tsukuba.ac.jp/attention-research/p201505130000.html


世界初、ヘテロジニアス波長可変レーザの開発に成功
〜シリコンフォトニクスと量子ドット技術の融合が、超小型・広帯域光デバイス実現の新機軸に〜

<概要>
 東北大学大学院工学研究科山田 博仁教授らとNICT山本 直克光通信基盤研究室室長の共同研究グループが、シリコンフォトニクスを用いた高い波長選択機能を持つ超小型の波長可変フィルターチップと、独自のナノテクノロジーによる化合物半導体量子ドットを用いた光増幅器チップという異種材料を効果的に組み合わせることにより、広い波長可変範囲を持つ超小型の波長可変レーザの実現に世界で初めて成功したと発表しました。
<今後の展開>
 開発したヘテロジニアス-シリコン/量子ドット超小型波長可変レーザの波長範囲をさらに広げていく事で、光通信システムの更なる大容量化に貢献することを研究グループは期待しています。

http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2015/05/press20150513-01.html
http://www.nict.go.jp/press/2015/05/13-1.html


「水をはじく表面」近くの水は、塩を溶かしにくい事を初めて実証
〜汚染を防ぐ新たな表面材料開発へ道〜

<概要>
 東京大学大学院工学研究科化学生命工学専攻の伊藤 喜光助教、相田 卓三教授らが、材料に付着している「塩」は、材料表面の疎水性が強いほど水に溶け出しにくくなることを初めて実験的に明らかにしたと発表しました。
<今後の展開>
 今回見出された現象は、薬剤設計に有用な生体分子シミュレーションの基礎として重要であり、既に理論的な予測はあったものの本研究により初めて実証されました。タンパク質内で発生する「塩」は、塩橋としてタンパク質の立体構造の安定化に役立っており、塩橋の強度と疎水性領域との関係の理解が深まることで生体分子の多様性解明につながる可能性があり、また新たな薬剤の設計指針となることも期待されるとのことです。さらに、この研究で得られた知見は、材料表面の汚染による問題、例えば船底への貝付着、フライパンの焦げ付き、服の汚れなどを防ぐための新しい表面材料設計の指針ともなる可能性があるとのことです。

http://www.t.u-tokyo.ac.jp/tpage/release/2015/20150512002.html
http://phys.org/news/2015-05-experimental-ionic-interactions-hydrophobic-surface.html

http://www.york.ac.uk/news-and-events/news/2015/research/nanotechnology-proteins/


グラフェンの漏れを塞ぐ:高速で耐久性ある、新しい水の濾過技術
〜Plugging up leaky graphene: New technique may enable faster、 more durable water filters〜

<概要>
 米国マサチューセッツ工科大学、同国オークリッジ国立研究所)、サウジアラビアのキング・ファハド石油・鉱物大学の共同研究グループが、化学蒸着と重合技術によってグラフェン膜の欠陥を修復し、一様に小さな孔を開けることにより、高速で耐久性ある水の濾過膜を作ったと発表しました。
<今後の展開>
 統括著者のRohit Karnik教授は、グラフェンが既存の濾過膜を置換える可能性を示せたが、欠陥修復、透過率(permeability)制御技術にはさらに改良が必要だと語ったとのことです。

http://newsoffice.mit.edu/2015/repair-graphene-leaks-0508
http://phys.org/news/2015-05-leaky-graphene-technique-enable-faster.html



太陽電池に期待されるハイブリッドペロブスカイトで電界効果トランジスタ実現
〜First field-effect transistors on hybrid perovskites fabricated for first time〜

<概要>
 米国のWake Forest UniversityとUniversity of Utahは、両大学の研究者達が、太陽電池材料として期待されるハロゲン化無機有機ハイブリッドペロブスカイトによって電界効果トランジスタ(FET)を作ることに初めて成功し、室温でハイブリッドペロブスカイトの電気特性を測定することができたと発表しました。
<今後の展開>
 本研究による無機有機ハイブリッドペロブスカイトにおけるFETの実現に対し、共著者のUtah大学Zeev Valy Vardney教授は、「この成果は、ハイブリッドペロブスカイトが太陽電池に加えて、様々なオプトエレクトロニクス応用の可能性を持つことを示した」とのことです。また、統括著者であるWFUのOana Jurchescu助教授は、「初のFETから色々なことを学び、その改良を試みる.さらに、このデバイスに注入したキャリアのスピン操作や電気的、光学的、磁気的応用の可能性を探して行きたい」としています。

http://news.wfu.edu/2015/05/05/media-advisory-first-field-effect-transistors-on-hybrid-perovskites-fabricated-for-first-time-2/
http://unews.utah.edu/news_releases/field-effect-perovskites/


ペロブスカイト太陽電池の変換効率、世界初の記録公認で15%を達成

<概要>
 物質・材料研究機構太陽光発電材料ユニットの韓 礼元ユニット長をはじめとする研究グループが、ペロブスカイト太陽電池において発電層に使用されているペロブスカイトの塗布方法、デバイスの作製方法を改良して、セル面積を1cm角以上の太陽電池を作製し、ペロブスカイト太陽電池として世界で初めて国際的な標準試験機関(業技術総合研究所 太陽光発電研究センター評価・標準チーム)にて公認変換効率15%を実現したと発表しました。
<今後の展開>
 今回の成果は、ペロブスカイト太陽電池の真の実力を明らかにし、セル面積拡大の可能性を示した.今後は、さらなる高性能材料の開発、ペロブスカイト太陽電池における各層間の界面の制御によって、より高い変換効率を目指すという.また、民間企業との共同で実用化研究を積極的に推進し、火力発電並みのコスト(7円/kWh)の実現により、太陽電池の普及に貢献して行くとのことです。

http://www.nims.go.jp/news/press/05/201505010.html


がんのリンパ節転移を標的する高分子ミセル型ナノキャリア
〜QOL向上を実現する革新的な治療法〜

<概要>
 東京大学大学院工学系研究科のオラシオ カブラル准教授、片岡 一則教授、同大学院医学系研究科の三浦 裕助教らの研究グループが、粒径50nm以下の高分子ミセルに抗がん剤を内包させてマウスに全身投与するとリンパ節に転移したがんに効くことを明らかにしたと発表しました。
<今後の展開>
 研究グループでは、本研究で見出された50 nm以下の高分子ナノキャリアを用いる治療法が医療の現場で利用され、がんの再発抑制と生存期間延長、QOLの向上に役立つことを期待しています。

http://www.t.u-tokyo.ac.jp/tpage/release/2015/20150501002.html
http://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/press.html#20150507



◆イベント・セミナー等の紹介
■■一般財団法人ファインセラミックスセンター(JFCC)2015年度 研究成果発表会

2015年度JFCC研究成果発表会を7月に東京、名古屋、大阪の3会場で開催されます。
「次世代を支える新材料開発と先端解析技術」をテーマにJFCCの最新成果を口頭ならびにポスターで発表するほか、外部有識者による特別講演があります。

参加の申し込みおよび発表の詳細はJFCCホームページをご覧ください。
http://www.jfcc.or.jp/26_event/#15seika

大阪会場
日 時:2015年7月3日(金)13:00〜(ポスターセッションは12:00
場 所:梅田スカイビル タワーウェスト36F スペース36L、36R
定 員:200名
特別講演:東京大学工学系研究科 教授 香川 豊 氏
「マテリアルズインテクグレーション:セラミックスの研究・開発時間の短縮を目指して」

名古屋会場
日 時2015年7月10日(金)13:00(ポスターセッションは12:00
場 所:愛知県産業労働センター ウィンクあいち 2F大ホール 及び 5F小ホール
定 員:400名
特別講演:新エネルギー・産業技術総合開発機構 技術戦略研究センター長 川合 知二 氏
「社会と技術をつなぐ日本の戦略:今後の新材料開発」

東京会場
日 時2015年7月17日(金)13:00(ポスターセッションは12:00〜)
場 所:東京大学 武田先端知ビル 5F武田ホール
定 員:250名
特別講演:京都大学 人間・環境学研究科 教授 内本 喜晴 氏
「シンクロトロン放射光を用いた蓄電池反応解析」

*参加費は全て無料です。(要、事前申込み)
*会場へのアクセス方法 http://www.jfcc.or.jp/26_event/#15seika


■■7/21〜9/4 TIA連携大学院サマー・オープン・フェスティバル2015 募集開始■■

ナノテクノロジーの未来を担う学生や若手研究者が集い、分野を超えて交流し、多彩なナノテクノロジーの世界を探究できる学びの祭典です。研究者としてスケールを広げ、新たな飛躍をもたらす機会となることを願って、国内外からトップ研究者と技術者を招聘。ハイクオリティでエキサイティングなプログラムがふんだんに用意されています。
http://tia-edu.jp/summer_fes2015/


■■科学技術振興機構主催「プロセスインテグレーションに向けた高機能ナノ構造体の創出」研究領域 第5回公開シンポジウム■■

本シンポジウムは、CRESTの研究領域「プロセスインテグレーションに向けた高機能ナノ構造体の創出」の研究成果を広く知っていただくことを目的に開催されます。
CRESTは、戦略的基礎研究推進事業(Core Research for Evolutionary Science and Technology)の略称で、戦略的に重点化した分野における基礎研究を推進し、今後の科学技術の発展と新産業創出につながる革新的な新技術を創出することを目的としています。

本研究領域では、自己組織化に代表される従来のボトムアッププロセスの一段の高度化を図ることによる、新規高機能ナノ構造体の創出をめざす研究をすすめています。具体的には、自己組織化や自己集積化などのボトムアッププロセスに、自己構造化や自己修復などの新たな手法を取り込むことにより、これまでに蓄積されてきた分子レベルでの精緻な機能をreal worldにおいて利用可能な技術として実現するための道筋をつけ、高度な機能を有するナノ構造体を創出することを目指しています。

今回は、平成22年度に採択された研究者による講演および平成21年度、22年度に採択された研究者によるポスター発表を行います。

日時:平成27年6月4日(木) 10:30−17:20
場所:コクヨホール 東京ショールーム2階
     〒108-8710 東京都港区港南1丁目8番35号
参加費:無料 (定員:180名 参加登録をお願いいたします。)
交流会:17:20〜 コクヨホール内
会費 4,000円/人
http://www.nanokouzou.jst.go.jp/event/sympo_vol5/



 nanobiz Magazine
 

◆チョット、深イイ情報を2件

日本人で良かったと思われる情報がありましたのでご紹介させていただきます。

“失敗例”を含む約1000の超伝導物質探索の結果を初公開
 室町英治理事、熊倉浩明NIMS招聘研究員は、東京工業大学の細野秀雄教授らとともに、超伝導物質の探索に関して、超伝導特性を示さなかった“失敗例”を含む広範な共同研究の結果を、NIMSが刊行支援するオープンアクセス誌Science and Technology of Advanced Materials(STAM)誌で公開されました。この成果報告は、最先端研究開発支援(FIRST)プログラムのもとで行われた4年間の研究成果をまとめたものです。
 
 今回の論文の筆頭著者である細野教授は述べています。「世界中で無駄な努力を避け、超伝導分野の研究を推進したい」という研究チームの総意のもと、広くデータを共有するために、STAM誌上での公開に踏み切ったとのことです。
http://www.nims.go.jp/news/archive/2015/05/201505180.html


JSTトピックス 『ナノテクを支える現代の匠』
 今年1月、文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム技術支援賞を受賞された東北大学マイクロシステム融合研究開発センター試作コインランドリの森山雅昭助手の記事がありましたので紹介させていただきます。

 この賞はナノテクで共用される先端設備・装置の技術支援に関わる技術者の貢献に対し初めて創設された賞です。受賞テーマは「シリコン深掘りエッチング(Deep RIE)における超精密形状制御」です。マイクロセンサーやマイクロアクチュエーター、LSI実装におけるシリコン貫通孔など、微小デバイスの加工には欠かせない技術とのことです。
 森山さんは、試作コインランドリの利用者に対し、技術や装置の使い方の相談をはじめ、装置の原理を教え、プロセス条件の設定を一緒に考えることで、利用者自らが試作し、目的に合った加工レシピが開発できるように指導しておられます。森山さんの支援は3年間で600件以上に のぼり、企業の人材育成の場にもなっています。
 森山さんは「利用者には、技術を自分のものとして、それぞれの企業に持ち帰っていただきたい」いつも願っておられるとのことです。
http://www.jst.go.jp/report/2015/150520.html

   


◆【連載!神田のカルチェラタン】


 JAPAN RUSHINGは「黒船」の再来?


 米国アップル社の円建て起債のニュースと日経ビジネスの「JAPAN RUSHING」を強引に重ね合せて考えてみました。これはもう、「黒船」再来ですよ!?(編集長 馬田芳直)
 
   nano2biz Magazine54号 カルチェラタン  〜「JAPAN RUSHINGは「黒船」の再来?〜 
 

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