55号 2015/6/16(火)

メルマガ nano2biz 第55号をお届けします。

 最近ではハウス栽培に限らず、露地栽培のカボチャ、スイカなどの野菜でさえも人工授粉を行うことが多くなっています。これらの野菜はウリ科で雌花と雄花に分かれており、ミツバチなどの媒介を必要としますが、今や、虫が少なくなりすぎて人間が作業しなければならなくなっているとのことです。

 流通が求める綺麗な野菜を効率よく生産するために防虫剤、除草剤、化学肥料等を多用する現代の農業の結果ですが、生態系の破壊は確実に進んでいます。やがて、ミツバチやテントウムシなども絶滅危惧種に指定される日が来るのも近いのではないですか。

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nanobiz News
◆技術開発動向
ウェアラブル機器のタッチパネル向け新素材量産へ

<概要>
 昭和電工と大阪大学発ベンチャーのマイクロ波化学はウェアラブル機器のタッチパネル向け新素材「銀ナノワイヤ」の量産技術を開発しました。
<今後の展開>
 導電性フィルムの素材で、パネルの曲面加工が容易になることから、メガネ型端末などへの採用を狙うとのことで、7月からサンプル出荷し、2016年から量産化したいとのことです。
出典:2015年5月28日付「日本経済新聞」



半導体ナノ粒子の発光が安定化するメカニズムを解明
〜個々の生体分子の観察に基づく創薬・診断技術の確立を目指して〜

<概要>
 産業技術総合研究所健康工学研究部門生体ナノ計測研究グループ バスデバン・ピライ・ビジュ 主任研究員、脇田 慎一 総括研究主幹(兼)研究グループ長らと、香川大学工学部 中西 俊介 教授(兼)工学部長ら、長岡技術科学大学物質・材料系 野坂 芳雄 名誉教授らは、半導体量子ドットと呼ばれる発光性の半導体ナノ粒子の退色機構を解明し、発光を安定化する有効な手法を提案しました。
 今回の研究では、量子ドットをカバーガラス表面にまばらに固定し、単一量子ドットからの発光を光学顕微鏡で観察した。その結果、励起状態にある量子ドットが電子を放出(オージェ・イオン化)すると、一重項酸素によって酸化されなくなり、発光が安定化することを見いだし、また、一重項酸素捕捉剤を用いれば、オージェ・イオン化していない中性の量子ドットの酸化が抑制されることも明らかにしたものです。
<今後の予定>
 今後は、いろいろのナノ材料からの間断のない発光を得ることを目的とし、電荷キャリアの緩和、オージェ・イオン化、表面欠陥、活性酸素の生成、酸化の間の関係を系統的に明らかにするため、他のナノ材料についても研究を進める予定とのことです。また、一分子レベルで間断のない発光に基づく生体イメージングを実現するため、半導体、有機材料、生体分子などを組み合わせたナノ生体複合体の開発を検討するとしています。
http://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/nr20150610/nr20150610.html


ニホウ化マグネシウム超伝導体で生体高分子を検出
〜省エネ・小型の冷凍機で作動できる超伝導分子検出器〜

<概要>
 産業技術総合研究所ナノエレクトロニクス研究部門超伝導分光エレクトロニクスグループ 全 伸幸 主任研究員、浮辺 雅宏 研究グループ長と電子光技術研究部門超伝導エレクトロニクスグループ 馬渡 康徳 上級主任研究員らは、日本電信電話株式会社物性科学基礎研究所 柴田 浩行 主任研究員(現 北見工業大学教授)と共同で、金属系超伝導体の中で最高の超伝導転移温度を持つMgB2(二ホウ化マグネシウム)を用いて、小型冷凍機で使用できる超伝導分子検出器を開発しました。
<今後の展開>
 今回、開発した超伝導分子検出器は、10 K以上の温度で生体分子を検出できるため、ポリタンクサイズ(20リットル)の小型冷凍機で作動でき、冷却に必要な電力量も3 kWh(従来の冷凍機の25分の1)以下と一般家庭用エアコン程度です。誰でも使える一般的な質量分析装置への搭載も容易になり、幅広い産業応用が期待されます。
 細胞内に分布していながら従来は検出できなかったタンパク質と医薬品との相互作用をより詳細に分析でき、副作用の少ない医薬品の開発などに貢献すると期待されています。4年後を目処に、市販のイメージング質量分析装置へ容易に搭載できる汎用的な超伝導分子検出器として仕上げるとのことです。

http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2015/pr20150601/pr20150601.html


超分子カーボン材料のパターン化による細胞の分化制御に成功
再生医療の実現にむけて、足場材料の大面積化を可能にする技術の開発〜

<概要>
物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 超分子ユニットの南 皓輔 研究員、有賀 克彦 ユニット長と、生体機能材料ユニットの山崎 智彦 MANA研究者らは、炭素材料の1つであるフラーレンの柱状結晶を用いて、(1)水面に浮かべ、(2)圧縮し、(3)基板に転写する、というわずか3ステップの簡便な方法で、細胞培養の足場となる材料の表面に、ナノスケールのパターンを形成することに成功しました。さらにこの足場材料が、筋芽細胞の成長と分化の制御が可能であることを実証しました。
<今後の展開>
 細胞の分化制御が可能な足場材料を容易に大面積化できる技術として、本研究成果は、再生医療の発展に大きく貢献することが期待されています。

http://www.nims.go.jp/news/press/05/201506020.html


光が表面を散乱せずに伝わる新しいフォトニック結晶を発見
〜シリコンのみで実現可能 半導体技術との融合で新機能開発に期待〜

<概要>
 物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA)の古月 暁主任研究者と呉 龍華NIMSジュニア研究員のグループは、光の透過や屈折を制御するフォトニック結晶において、光を含む電磁波が、表面のみを散乱することなく伝わる新しい原理を解明しました。蜂の巣状に配列された絶縁体や半導体の円柱(ナノロッド)の位置をわずかに調整するだけで、電磁波は結晶の角の部分や欠陥にも散乱されることなく伝わります。この性質は、シリコン等の半導体だけでも得られるため、現在広く普及している半導体技術による情報処理と優れた情報伝播機能との融合によって、新規機能の開発に繋がることが期待されます。
<今後の展開>
 ナノロッドの素材としてシリコンが使えるため、既存のエレクトロニクス技術との融合により、新規機能や新規デバイスの研究開発に新しい展開が期待されます。
http://www.nims.go.jp/news/press/06/201506080.html


エタノール燃料から常温常圧で電力を取り出せる触媒を開発
カーボンニュートラル社会へのブレイクスルー〜

<概要>
 物質・材料研究機構阿部英樹 研究員は、ナノ材料科学環境拠点野口秀典 研究員、および東北大学原子分子材料科学高等研究機構の藤田武志 准教授と共同で、常温常圧のエタノール燃料から有毒排気ガスの発生を伴わずに効率よく電力を取り出すことができる新しい触媒材料「TaPt3(タンタルプラチナ)ナノ粒子触媒」の開発に成功しました。
<今後の展開>
 今回開発した触媒を用いることで、従来の触媒に比べて10倍以上の電流密度を達成し、毒性排気ガスの発生を伴うことなくエタノール燃料から効率よく電力を生みだすことが可能となりました。TaPt3ナノ粒子は、バイオマス燃料技術との協働によって、カーボンニュートラル社会実現へのブレイクスルーを果たすことが期待されています。

http://www.nims.go.jp/news/press/05/201505210.html


◆イベント・セミナー等の紹介
■■NBCIアドバイザーの飯島澄男先生が欧州発明家賞を受賞されました

6月11日(木)、飯島 澄男 産総研名誉フェロー(元ナノチューブ応用研究センター長)と湯田坂 雅子 招へい研究員(ナノ材料研究部門)らは、European Patent Officeの2015年European Inventor Award(外国人発明家賞)を受賞しました。

欧州発明家賞は、技術革新や経済・社会に多大な貢献をした欧州出身の発明者を選定、表彰する賞で、欧州域外出身の発明者に対しては同賞の外国人発明家賞が授与されます。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150612/k10010111911000.html


■■研究開発の俯瞰報告書「ナノテクノロジー・材料分野 2015年版」■■

内外のナノテクの先端動向の把握や今後の検討に、活用されることが期待されています。
http://www.jst.go.jp/crds/pdf/2015/FR/CRDS-FY2015-FR-05.pdf

ナノテク以外にも、環境・エネルギー、ライフサイエンス・臨床医学、情報科学技術、システム科学の各5分野の報告書が公開されています。
http://www.jst.go.jp/crds/report/report02.html


■■ナノテクノロジーの実用化を加速する米国の新戦略『NNI 2.0』が公開されました■■

〜New Initiatives to Accelerate the Commercialization of Nanotechnology〜
クリントン大統領が「鉄より軽くて10倍強い材料、国会図書館にある全情報を角砂糖1個に収めるデバイス、細胞2〜3個の癌性腫瘍の検知ができたら素晴らしい。20年以上かかるものもあるだろうが、この研究を推進するのが政府の役割だ」と語ったのが2000年1月ですから、早や15年が経過しています。

この15年間にNNIは200億ドル(約2兆4千億円)をナノテクノロジーの研究開発、最先端の評価・加工設備、人材育成、ナノ安全などに投資してきた結果、グラフェンのような2次元材料によるエレクトロニクスの革新、ナノ構造材料によるエネルギー生成・蓄積、ナノ粒子を用いた標的治療など多数の成果が生まれました。しかしながら、実用化が進んでおらず、今後の課題となっています。このため、大統領科学技術諮問委員会は「ナノテクノロジーの分野はNNI 2.0という第2期に入る。そこでは、ナノスケールデバイスが分野を跨ぐナノシステムとなり、基礎的な研究からナノテクノロジー実用化に戦略の中心が移行するだろう」と期待を寄せています。

また、このNNI 2.0を成功させるには官民一緒になって製造、企業、人材育成を行うことが肝要であるとしています。

http://www.nano.gov/May2015Forum
https://www.whitehouse.gov/blog/2015/05/20/new-initiatives-accelerate-commercialization-nanotechnology


 nanobiz Magazine
 

◆【連載!神田のカルチェラタン】

 気分で行う株式投資


 何度かこのコラムで、景気は「気」で動く、景気の気は市場の空気、気分等であると書きました。
 今回は株式投資について、こんなことを考えてみましたのでご紹介します。
(編集長 馬田芳直)
 
   nano2biz Magazine55号 カルチェラタン  〜「気分で行う株式投資」〜 
 

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